「小規模事業者持続化補助金を活用して販路開拓をしたいけど、どのような事業計画を作成すれば良いか分からない」という方に、今回は「過去に採択された事業者がどのような事業計画で採択されたのか」を採択例をピックアップしてご紹介させていただきます。
持続化補助金は広告宣伝をはじめ、展示会の開催や店舗改装など幅広い事業に活用できる使い勝手の良い補助金ですが、使用用途が広すぎて「自社でどのように活用して良いか分からない」とおっしゃる方も多いです。
今回ご紹介させていただく事例は、実際に持続化補助金に採択されて補助事業を実施されたものですので、事業者の具体的な取り組み内容や、事業計画の考え方・作り方が参考になります。
持続化補助金の事業計画に悩まれている方は、下記に掲載されている採択事例を参考に、自社の事業計画に使えそうなものを探してみてください。(掲載している内容は東北経済産業局産業部経営支援課が作成した「小規模事業者持続化補助金 活用事例集」からピックアップしたものです)
持続化補助金 採択事例集について
掲載している事例集は令和元年度〜令和2年度に実施された小規模事業者持続化補助金の採択事例から、下記の項目を重視して選ばれたものになります。
◎売上や利益の拡大の効果が大きかったもの
◎商品開発、新サービスの展開等を行ったもの
◎地域資源や地場産品を活用したもの
◎地元住⺠や観光客など、ターゲットを特定の層に絞った特徴的なもの など
チラシや広報、店舗改装、展示会出展などを行う場合でも、これらを単に行うのではなく、それまでの経営改善や新商品開発、新サービス提
供・改善、技術力向上や創意工夫した取組と複合的に事業を実施することで、商品・サービスの価値の向上や差別化・競争力向上などが見込まれることがポイントとされています。
持続化補助金の採択ポイントとして「今までのサービスの延長でおこなうチラシ配布」よりも「これまでの実績を活かして実施する新しい取り組みでおこなうチラシ配布」の方が採択率は向上します。事業の「新規性」が事業計画には必須となりますので、その点を踏まえて、下記の採択事例をご覧ください。
事例1:[サービス業]パンフレットとECサイト作成でHPアクセス数が150%増加
事業計画
カプセルトイからECへ。会津木綿の非対面型ビジネスモデルへの転換
補助金申請のきっかけ
会津⽊綿を活⽤した服飾雑貨、インテリア⼩物等の製造⼩売を⾏い、⾃社店舗・オンラインショップの他、福島県内の旅館 や全国70店舗以上の雑貨店で商品を販売している。コロナ禍で多くの卸先が休業し、その影響を受け注⽂が激減。これまでは対⾯型の販路が中⼼だったが、⾮対⾯型の新たな販路を開拓することが課題となった。
補助事業実施の効果
⾮対⾯型の観光⼟産販売⽅法として、道の駅や旅館等に2段タイプのカプセルマシンを設置。上段で⼤⼈向けにマスキングテープ、下段で⼦供向けにヘアゴムを販売し、幅広い客層に向けた宣伝効果を狙った。
また、会社や直営店の紹介が主軸であったHPにオンラインショップへの誘導機能を追加。カプセル内に同梱したQRコード付きのパンフレットから、HPやオンラインショップへの誘導を図った。その結果、HPのページビューが前年⽐150%以上を記録。オンラインショップでの売上増加だけでなく、カプセルマシンの利⽤者から電話での問合せもあり、店舗売上の増加にもつながった。また、旅館・ホテルへの営業のきっかけとなり、部屋のリフォームの受注を頂くことができた。
事例2:[サービス業]ホームページ作成とSNS活用で体験申込を13件獲得
事業計画
HPとSNSを活⽤した新たな販路開拓と売上増加計画
補助金申請のきっかけ
コロナ禍前は各地へ赴きトルコランプの魅⼒を発信、販路を拡⼤するために注⼒し、来店客と売上増加に繋げてきた。
しかしコロナ禍により来店客数が⼤きく減少し、またPRを⾏って きたイベントの中⽌も余儀なくされ、先⾏きが不透明な状況となった。このような現状を打破するためにも新たな販売⽅法の検討などが喫緊の課題となった。
補助事業実施の効果
ホームページを初めて作成し、⾃社の宣伝と販路拡⼤を図った。結果、体験教室の申込が13件あり⼿ごたえを感じている。また、来店顧客メインの営業スタイルを転換し、 インターネットでの販売スタイルを確⽴し、「お家で出来る⼿作りトルコランプ体験キット」を考案。キットを購⼊したお客様から「楽しく⾃宅で制作できた」というお⾔葉を頂いた。加えて、顧客⼀⼈⼀⼈の情報を⼊⼒した顧客管理データベースを作成。今後はこのお客様に対しDM便を発送するなど販売促進を実施し「ファン化」を⽬指す。
事例3:[宿泊業]補助金で外国人向けパンフレットを作成
事業計画
新たな販促インバウンド⽤パンフレットの作成
補助金申請のきっかけ
昭和33年に開業。総畳敷き・総⻘森ヒバ造り、全部屋和室の 温泉宿で、地産地消を意識した⻘森の旬を味わえる郷⼟料理が好評。
近年は特に外国⼈の客数・割合がともに増加傾向だったが、コロナ禍により売上が前年同⽉⽐で約57%減少するなど、 ⾮常に厳しい状況となった。
補助事業実施の効果
「英語版」「簡体字版」(主に中国⼈向け)「繁体字版」 (主に台湾⼈向け)など複数⾔語によるパンフレットを作成。 観光施設等にパンフレットなどを配布・設置したところ、国内 在住の外国⼈から問合せが約30件あり、売上回復に繋がった。
また、パンフレットを⾒てから来てくださったお客様から「素敵な宿」「簡体字で書かれていて⾒やすかった。」など嬉しい声もいただいた。 今後、外国⼈観光客の⼊国制 限が緩和された際には、パンフレットを増刷し、外国⼈観光客等への宿泊プランを検討する等、PRに取り組みたい。
事例4:[飲食業]外国語対応のホームページ作成
事業計画
県外や訪⽇外国⼈を取り込む為の地酒の強化、ウェブサイト新設
補助金申請のきっかけ
平成30年より⼭形⽜をメインとした焼⾁店を経営。これまで に培った信頼関係により、取引先から希少部位や新鮮なホルモンを適正価格で仕⼊れることができ、お客様の満⾜度と安定した利益率の維持に繋がっている。
⼀⽅、少⼈数運営のため繁忙時の電話対応が難しいことが課題。また、県外のお客様からは地酒の品揃えに関する要望が多く、競合店舗にも負けないドリンクメニューの強化が必要であった。
補助事業実施の効果
冷蔵ショーケースを⼊⼝付近に設置し、地元の⽇本酒の品揃えを強化。今までよりも興味を持つお客様が増え「おいし い」「初めて飲んだ」などの声を頂いた。 さらに、英語翻訳のあるウェブサイトを新設し、Web予約を開始したことで、オペレーションの合理化を図ることができた。また、外国語に対応したメニューでの案内が可能に なり、来店した外国⼈のお客様からも好評を頂いた。
事例5:[サービス業]店頭POPやチラシの活用で前年比440%の売上増
事業計画
作業効率化による「だだちゃ⾖」の販路拡⼤と販促ツールの整備
補助金申請のきっかけ
庄内地⽅の旬の⻘果物を中⼼とした「庄内野菜」を県内外の 百貨店・スーパー等に販売する。庄内地⽅には昔ながらの在来野菜が多く、⾼品質な⾷材の宝庫である。
特に「だだちゃ⾖」 は全国的な⼈気商品だが、仕⼊、選別、計量、袋詰めを短時間に⼿作業で⾏わなければならず、出荷量に限界があった。
補助事業実施の効果
従来は⼿作業だった「だだちゃ⾖」の袋詰め作業に機械を導⼊したことで、作業効率化に成功。新規取引先が増え、さらに機械化したことで最盛期には前年⽐440%以上の売上を記録した。
また、産地の農家と連携して、季節ごとの商材を旬の時期にプロに撮影してもらい、販促ツールを整備。店頭POPや商品シール、チラシ、SNS等で活⽤した。 写真は購買の重要な判断基準であり、訴求⼒が⾼まったことで購買のリピートにもつながっている。
事例6:[サービス業]サービスのPRパンフレット作成で事業領域を拡大
事業計画
レーザー彫刻機導⼊による新サービスのPR パンフレット作成
補助金申請のきっかけ
創業65年のはんこ店。県内企業へのオーダー製ゴム印の納品が最も多く、売上の8割を占める。また「電⼦部品捺印⽤ゴム印」等、全国で数件しか扱っていない特殊製品も製造している。
⼀⽅で個⼈顧客からの受注は減少傾向。近年は販路拡⼤のためレーザー彫刻機を導⼊し、地域に集積する⾦属部品製造業への「⾦属マーキング加⼯」や、看板等への「オリジナル⽂字の刻印」等、新たなサービスの提供に取り組んでいる。
補助事業実施の効果
レーザー彫刻機導⼊による新サービス「⾦属マーキング加⼯」「オリジナル⽂字の刻印」や、「電⼦部品捺印⽤ゴム印」 等を紹介したパンフレットを作成し、機械部品製造業を中⼼に160社に対して営業活動を⾏った。
その結果、複数社から⾒積依頼を頂くことができ、売上⽬標も達成できる⾒込みである。 本事業により、地域で「はんこ店」というイメージが強く定着している中で、⾦属マーキング等の新サ ービスを周知することができ、事業領域の拡⼤を図ることができた。
【投稿者プロフィール】小さな会社に特化した大阪府の集客デザイナー。グラフィックデザイナー歴17年。独立して7年で約180社の広告宣伝・ブランディングに携わる。ブログとYouTubeを活用した広告費0円のネット集客が得意で、自社HPの閲覧数は50,000PV/月(一般的なHPは1,000PV程度/月)。小規模事業者持続化補助金を活用した制作実績40社以上、申請サポート実績は200社を超えている。